長期の物価の動きを分類ごとに比較してみた。デフレ経済とはいえ教育費だけはインフレ

e-Statという総務省統計局の統計データベースで細かな消費者物価指数が公開されています。

2015年基準消費者物価指数/長期時系列データ/品目別価格指数/全国/月次

物価動向のトレンドを知っておくことは、我々の人生プランや投資プランを立てたり、さらには就職先を選択するのにも役に立つかもしれません。
非常にお金をかけて作られているデータですので、国民として十分活用させていただこうと思い、分析してみました。

【大分類・長期】

とりあえず大分類で長期トレンドをプロットしてみます。
2015年基準 消費者物価指数の解説 で定義されている物価の大分類は下記のようになっていました。

  • 食料
  • 住居
  • 光熱水道
  • 家具家事用品
  • 被服及び履物
  • 医療保険
  • 交通通信
  • 教育
  • 教養娯楽
  • 諸雑費

この10種類で家計の支出は網羅されているようです。
たとえばNHK受信料は『教養娯楽』にカテゴリされています。

これら分類の物価推移をプロットしたのが下図です。
今回は分類ごとに比較したいので金額の絶対値ではなく、基準となる年月(ここでは1970年1月)を1としてそこからの伸び率を縦軸にプロットしています。

図1:1970年1月の値を1としたときの物価指数の大分類の推移

教育費が高い!!

長期で見て大分類の中でダントツに値上がりしているのは教育費で、何と7倍の値上げです。
サラリーマン年収によると1970年の平均年収は100万円だったそうです。
現在の平均年収が約500万であることを考えれば、給与水準は5倍なので、高度経済成長期の感覚でも負担は140%(=7倍/5倍)です。
第2位が住居費で4倍、平均年収の伸び率よりは抑えられています。これがデフレというわけです。
世界では増加が問題になっている医療保健費が日本では全然増えていないのも印象的です。

【教育費の物価推移】

デフレ世界なんのそのとインフレを満喫している教育業界はいったいどんなマジックを使っているのでしょうか?
特徴的なのは

  • 階段形にインフレが進んでいること
  • 2010年に激減していること

ですね。
前者は毎年授業料が値上げされてきたという事実を反映していると推測できます。
また2010年は高校の授業料無償化の影響でしょう。
もしこれがなかったら現在は9倍程度まで上げていたと思われます。民主党様様です。

では次に『教育』の上昇は具体的に何が原因で上がっているのかを調べましょう。
2015年基準 消費者物価指数の解説 によると教育費は

  • PTA会費(小学校)
  • PTA会費(中学校)
  • 中学校授業料(私立)
  • 高等学校授業料(公立)
  • 高等学校授業料(私立)
  • 大学授業料(国立)
  • 大学授業料(私立)
  • 短期大学授業料(私立)
  • 幼稚園保育料(公立)
  • 幼稚園保育料(私立)
  • 専修学校授業料(私立)
  • 教科書
  • 学習参考教材
  • 補習教育(小学校)
  • 補習教育(中学校)
  • 補習教育(高校・予備校)

の16分類になっています。
これらを図1と同様の方法でプロットしたのが下図になります。

図2:教育に関わる物価の1970年1月を1としたときの推移。

大学(国立)の学費上がりすぎ!!!

1970年1月の47倍です。死ねる。
元が安すぎたのではないかという説もありますが、それにしたって21世紀以降のデフレ経済を一切反映せずに値上げを貫くのは難しいことです。
独占商売では無いですがとんでもない参入障壁の高さを持っていることから値上げ戦略が最適といえば最適ですが、中々戦略理論通りにはいかない世の中でこの硬派を突き通すのは畏敬の念すら抱いてしまいます。

またこのチャートでは国立大学授業料が高すぎてわかりにくいですが、2位以降も地味に10倍を達成しているような気がします。
そちらにもスポットを当ててみましょう。

図3:教育費用の1970年1月を基準とした物価推移。ただし国立大学授業料は除く

公立幼稚園保育料が10.59倍、私立大学授業料が9.94倍、私立幼稚園保育料が9.77倍と高レベルで並びます。
幼稚園と大学という初等教育、高等教育が公立私立問わず顕著に値上げしているようです。
また私立大学なんかは昔から高かったでしょうから、このインフレは40年前公立が特別に安かったことだけが原因ではないと推測できます。
私の弱い教育理解では、初等教育こそが学習力の底上げに投資対効果が大きくて公的機関がカネをかける価値が大きい、また高等教育は産業に直結するので公共投資するべし、だったような気がするのですが、現実はどうもそうはなってないようです。
まあ私立中高も他分類の物価水準と比較すれば十分高レベルなので無償化された公立高校以外はすべて高いので、全部高なだけかもしれません。
とはいえこの数値を見ると『高校無償化』というスローガンの元で高校の学費を一極集中で安くするよりは初等教育からまんべんなく補助してほしいところだったと私は思います。

【結論】

1970年からの物価の推移を見ると、平均年収の増分と比較してほとんどの物価が下がっている。
しかし唯一教育関係の物価だけは上昇を続けており、特に国立大学授業料の伸びが激しい。
国立大学以外でも初等教育から全般にわたって授業料が大きく上昇しているが、無償化された公立高校だけは安い。

【分析コード】

元データはe-Statからダウンロードした『品目別価格指数(1970年1月~最新月)』です。
実際Rに読み込ませるためにヘッダを分割したりUTF8に変換したりしましたので、整形したあとのデータをここに上げます。
zmi2015a_utf8_2
header_utf8

#R
library(tidyverse)
library(lubridate)
library(forcats)

s1 <- read_csv("data/zmi2015a_utf8_2.csv") %>%
        rename(ym = `類・品目符号(Group/Item code)`) %>%
        mutate(date = make_date(ym %/% 100, ym %% 100, 1)) %>%
        select(-ym) %>%
        gather(code, value, -date)
s2 <- s1 %>%
        filter(!is.na(value)) %>%
        arrange(code, date) %>%
        group_by(code) %>%
        mutate(nvalue = value/first(value)) %>%
        ungroup

h1 <- read_csv("data/header_utf8.csv", col_names=FALSE) %>%
        t %>% as.tibble %>% slice(-1)
names(h1) <- c("namej", "name", "code", "sno", "weight", "wp10000")

# 図1
gp.bukkall <- s2 %>%
        left_join(h1, by = "code") %>%
        filter(namej %in% c("食料", "住居", "光熱・水道", "家具・家事用品", "被服及び履物", "医療保険", "交通・通信", "教育", "教養娯楽", "諸雑費")) %>%
        mutate(namej = fct_reorder(namej, nvalue, fun = last, .desc = TRUE)) %>%
        ggplot(aes(date, nvalue)) +
          geom_line(aes(color = namej, linetype = namej))

# 図2、図3
gp.edu.detail <- s2 %>%
        left_join(h1, by = "code") %>%
        filter(between(parse_integer(code), 8000, 9000)) %>%
        #filter(namej != "大学授業料(国立)") %>% #if you want to remove national university fees
        mutate(namej= fct_reorder(namej, nvalue, fun = last, .desc = TRUE)) %>%
        ggplot(aes(date, nvalue)) +
          geom_line(aes(color = namej))

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